「見よ。流れて行く大河のごとき暗雲を。
いまこそ七つの橋は落ちたり。七つの塔は崩れたり。
見よ。大鴉の羽根より昏き雲海から、青白い稲光が駆け上がる様を。
あれなるはいまやその名を知るものも失われた名も無き城。
いと気高き三人の騎士に守られし大理石の大城塞。
七の七倍の尖塔と回廊に、七の七乗の部屋を備えた眠れる英知の城。
終末を避けるために作られた避難所。
終末を迎え撃つために反抗の要塞。
それはいまや終末の存在を明かす墓標となりはてた。
狂気のみが作りだせる歪みし柱の列と数々の回廊、階段、尖塔、神殿。その羅列の果てしないつながり。
“はじまりの時”より隠されし城なる都は天に眠る。
聞け。吠え猛る風のうなり声を。
いまこそ七つの橋がかかりたり、七つの塔は空を突きたり。
聞け。無慈悲なる炎の剣は振るわれる、竜の咆吼に似るその音を。
失われた城にかがり火が灯り、新たな名付け親を迎える。
旧き魂の騎士を召し出すために供されし異界の殉死者よ安らかれ。
五の五乗なる墳墓のひとつひとつに姫菊の花の絶えぬことを。
呪われた民の眠る傲慢の墓所。
呪われた民を幽閉する永劫の祭壇。
しかし墓守は気付く。自らの罪の欠片がまたもや夜に放たれたことを。
忘れ去られた終末が真紅の流星にも似て地上へと降り注ぐ。それは目覚めを約された八十二の典災に宿りて終末時計を進めるのだ。
かくて旧く新しき物語の幕が開く。
願わくば、その鍬が幸多き実り《ルビ:ノウアスフィア》を切り開かんことを」
――ノウアスフィアの開墾OP
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